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異変~竜
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黄昏の兆し
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ハイタカ~逃亡者
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旅路
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街
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迷い~追われる者
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軛
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野へ
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クモ
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大地の人
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棘と傷心~悪党
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追憶~老店主の忠告
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挿入歌「テルーの唄」映画バージョン(アカペラ)
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別れ~影の恐怖
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強奪~不死の誘惑
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急行~対峙
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光と影
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真の名~目覚め
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死の呪い~狂気
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命の火
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メドレー ~終わりと始まり~主題歌「時の歌」~エンディング
SACD HYBRID(Stereo/Multi-ch)
収録分数:約74分
宮崎吾朗 第一回監督作品「ゲド戦記」のサウンドトラック。
宮崎吾朗 コメント
寺嶋民哉さんに初めてお会いしたのは、2005年の秋に「ゲド戦記」が作画インしてからでした。それまで、「ゲド戦記」の劇伴音楽をどなたにお願いするか色々な候補が上げられたのですが、今ひとつ決め手に欠き、決めあぐねている状況でした。もう決めないと時間がないという時に、ある方の紹介で寺嶋さんに出会い、そしてお願いすることを即決したのでした。
寺嶋さんに決めた理由は、勇壮な曲から、哀愁を帯びた曲、そして楽しげ曲まで手がけられる幅の広さをお持ちなことでした。美しかったり、格好良かったりする曲を書ける方は多いのですが、どうしてもある方向に限定されがちです。しかし、私たちとしては映画の世界観が広がるような幅の広さ、そして雄大さをもった音楽が欲しかったのです。その贅沢な願いに、寺嶋さんはぴったりだったのです。
もう一つの理由は、「若さ」でした。比較的に私と年齢が近いということは、実はとても助かったことです。これが、ずっと年上の大家と呼ばれるような方だったら、お付き合いするのが大変だったのじゃないかと思います。実際の寺嶋さんは、こちらの注文も快く聞いてくださるとても気さくな方で、全く偉ぶらない人柄の良さと、時折垣間見せる熊本出身の九州男児的な熱っぽさが魅力です。
「ゲド戦記」の劇伴音楽に私たちが求めたのは、どこか地域性や土着性を感じさせる曲でありながら、映画の世界の広がりを感じさせるものであるということでした。それは音楽で登場人物たちの心情を表現するというだけでなく、場所の持つ匂いを表現するようなことを求めたということです。たとえば海を渡る風の香りであったり、街の猥雑な匂いであったり、草原の草や土の香りであったり。
寺嶋さんは私たちの期待に見事に応えてくれました。彼の曲が加わったことで、映画はより大きな広がりを獲得することができたと思います。今回パイプ演奏に参加してくれたスペインのバグパイプ奏者カルロス・ヌニェスの「彼の曲にはケルトやガリシア、時にスパニッシュな香りがあるのに、日本的でもあり、とても魅力的だ」という言葉にも、そのことが端的に表れていると思います。
初めて映画づくりというものに関わって、映画を作るということは、どこか別の世界を主人公たちと一緒に旅するようなものだと感じています。その旅の途上で見たもの、出会った人たち、嗅いだ匂い、耳にした言葉や音、そうしたものをこのアルバムに収められた曲たちが思い出させてくれます。
幸せな旅の思い出となる音楽をつくってくれた寺嶋さんに、心から感謝しています。
2006年初夏 宮崎吾朗
寺嶋民哉 プロフィール
作曲家 編曲家
1958年4月10日 生まれ
http://terra.velvet.jp/index.html
高校時代にブラスバンドでトランペットを始めたことがきっかけになり、吹奏楽や小編成のバンドアンサンブルの編曲を手掛けるようになる。
卒業後はロックバンドに参加、キーボードを担当する。
この頃からシンセサイザーを使った編曲を始め、音楽の方向性も次第にジャズ・フュージョン系からクラシックを基調とした音楽に変化した。
シンセサイザーを駆使した独特のオーケストレーションで評価を受け、数多くの映像音楽で才能を発揮している。
1994年、ドラマ「南くんの恋人」サウンドトラックで初のリーダーアルバムを発表。
その後も多くの話題作の音楽を手掛け、映像音楽を中心に次々と話題作を発表している。
近年では、ミュージカルの作・編曲等、舞台音楽にも活動の場を拡げている。
日本音楽著作権協会会員。日本作編曲家協会理事。
2004年度 映画「半落ち」にて日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。
レコーディング風景
レコーディングの様子
左から:音楽を担当する寺嶋民哉氏、バグパイプ奏者カルロス・ヌニェス氏、宮崎吾朗監督、鈴木敏夫プロデューサー
匂い立つバグパイプの音色
本作品のメインテーマを演奏するのは、世界最高のバグパイプ奏者のひとりであるカルロ ス・ヌニェス。寺嶋民哉の属すインスパイア・ホールディングスの社長である藤田雅章の提案で、偶然来日中であった彼にオファーしたところ、寺嶋が作曲した 譜面を見るなり興奮とともに参加を快諾しました。ケルト文化圏であるスペイン北西部ガリシア出身の彼は、ケルト的なものを基調としながらも、日本、アジ ア、そして中東といったエスニックな香りの漂う本作の音楽に興味を覚えたのだといいます。
ガイタ(ガリシアのバグパイプ)、ホイッスル、オカリナなどさまざまな楽器を自在に操る、その天真爛漫な演奏に立ち会ったスタッフは口々に「腰が抜けた」 「体中に鳥肌が立った」と感想を述べました。彼の演奏の付いた場面を観ながら吾朗監督は「風の薫り、土の匂い、雑踏の人いきれ。この音は、映画に匂いを吹 き込んだ」とコメントしました。
バグパイプ フルート奏者
1971年 生まれ
カルロス・ヌニェスはスペインのガリシア地方出身の音楽家。
ケルト文化の影響が強い同地から、世界に向けて発信し続けるその音楽は絶大なる支持を受けている。
操るのはガリシア地方を代表する楽器であるバグパイプ(ガイタ)とフルートで、その独創性と激しく情熱的な演奏から、「バグパイプのジミ・ヘンドリクス」などと絶賛されている。
様々なジャンルのアーティストとの交流も多く、ケルト音楽の枠にとどまらない創作活動を続けているカルロスは、映画音楽にも積極的に取り組んでおり、アカ デミー賞最優秀外国映画賞を取った『海を飛ぶ夢』や日本映画『星になった少年』のサウンドトラックにも参加している。
最新作は映画音楽やクラシックの名曲に取り組んだ『シネマの海』(ソニー・ミュージック)
http://www.carlos-nunez.com/