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2011年02月04日 / 仲井戸 CHABO 麗市
「OK!!! C'MON CHABO!!!」ライナーノーツ by 寺岡呼人
1. チャンスは今夜/奥田民生
僕等の世代には一番インパクトのあるナンバーがオープニングを飾る。個人的にも、最初の武道館での、この曲のチャボさんに痺れまくった。みんながこの曲のイントロをコピーしようとしてた。
さて、民生君はこの曲の演奏、ミックスを全部一人で自宅でやったそうだ。何でもツアー中で楽器が出払っていてチープで弾きづらいセミアコしかなかったらしく、それであのイントロを弾いた。それがかえってこのアルバムに相応いサウンドになってると思う!彼は、羊の皮をかぶった狼というか、普段はあんな穏やかなムードなのに、ある一瞬恐ろしくロック魂を垣間見せる。この曲にもドキッとするぐらい、それが剥き出しになる瞬間がある。そして、それが彼なりのチャボさんへのリスペクトなんじゃないだろうかと思う。
2. ギブソン(CHABO‘S BLUES)/ザ・クロマニヨンズ
個人的に偶然ヒロト君と最近再会して、よく食事など誘ってもらっていて、そこで「僕らはある時期からずっとレコーディングはモノラルなんだよ」と聞いていた。そしてこのアルバムのマスタリングの日、スタジオに届けられたマスターデータはザ・クロマニヨンズだけが唯一アナログテープ!しかもリールには曲の分だけの長さのテープ。後は恐らくもったいないので、今後の為にとっておくのだろう。拘りというとそれまでだけど、なんていうか音楽そのものへの愛をそのアナログテープに感じた。他のアーティストはみんなデジタルマスターで、最初から音圧を突っ込んで納品できるのだが、クロマニヨンズは最初ビックリするぐらい音が小さかった。昔はみんなこれぐらいの音圧だったんだなーと新鮮だった。
さて、ザ・クロマニヨンズの「ギブソン(CHABO’S BLUES)」。「ショーウィンドウのギブソンを手に入れたい」というロック少年そのもののナンバーを、ロック少年そのもののザ・クロマニヨンズがシャウトしまくる2曲目。テンポもオリジナルよりも上がり、またモノラル録音だからか、ガレージパンクのような荒々しさと、ロックンロールの純粋さが同居し、“CHABO’S BLUES”の普遍性を証明したナンバーになった。
3. うぐいす/斉藤和義
『BABY A GO GO』の中の一曲。既にソロアルバムを出してたチャボさんの、ある意味ソロ曲みたいなムードがあると、当時から思っていた。そして、このアルバムは全体的にアコースティックなサウンドに包まれていて、エンジニアが当時Lenny Kravitzのエンジニアでもあった、ヘンリーハッシュというのもあり、とてもアナログな音で、ファンはみんな驚き、そして大好きになった。リバーブも殆どなく、生々しいサウンドは初期のRCや古井戸を思わせ、いい意味で原点回帰をしたような錯覚になり、このアルバムをフェイバリットアルバムだという人も多い。
和義君の「うぐいす」もまた、彼が全てを演奏したアコースティックなサウンド。まるで、彼のオリジナル曲なんじゃないかと思うほどハマっている。
4. ポスターカラー/TRICERATOPS
僕の中のトライセラトップス、そして和田唱君のイメージを見事に裏切り、そしてこの曲の素晴らしさを改めて伝えてくれ、トライセラの新しい側面、可能性も感じたトラックだ。
古井戸の叙情感と、トライセラのポップスは正反対にあると勝手に思っていたので、この曲を選曲してきた時は驚いた。
ところが和田君の中の叙情感は実はこれぐらいの曲でやっとバランスがとれるほど、あるんだって事を気づかされた。そして、チャボさんのソングライティングも、こうして新世代にリメイクされると、コンポーザーとしてのクオリティーが当時から凄かったことを再認識される。
こういう化学反応こそが、このアルバムを制作するにあたり、一番望んでいたことだった。この曲を聴いて、トライセラファンは勿論、色んな人達が古井戸を聴くためにCDショップに行くのではないだろうか?
5. ティーンエイジャー/寺岡呼人
確か日清パワーステーションで初めて聴いた。
初めて聴いた時から、大好きだった!この曲にはチャボさんのすべてが詰まってると思った。「少年」「恋」「音楽」「夏」「月」「海」、とにかく“永遠の夏休み”なのだ、僕の中のチャボさんは。そして“永遠の夏休み”に浸っていたい僕は、この曲を聴く度に甘酸っぱい少年の夏休みに戻れるのだ。だから、ちょっとビーチボーイズ風で、ちょっとサムクック風のムードでアレンジしてみた。
そして、個人的に梅津和時さんのサックスが大興奮だった!もう最初の1音から「梅津和時」なのだ。僕らRCファンには堪らない瞬間だ。その梅津さんがソロを吹く前に僕のテイクを最初から聴きたいと仰るので、アタマからプレイバックした。聴き終わって梅津さんが「チャボを分かってる歌い方だね」と言ってくれた。それが最高に嬉しかったし、それを感じてあのソロを吹いてくれたんだと思うと、感無量である。
6. 月夜のハイウェイドライブ/桜井和寿(Mr.Children)
この曲は僕のスタジオ“CRY BBABY” の狭い狭いブースに桜井とチャボさんが入り、一発録りでのレコーディングだった。
当たり前だが、歌詞を間違えたり、演奏を間違えると、最初からやらないといけない緊張感のあるレコーディング方法。丁度、このレコーディングの一ヶ月前に僕のイベント、“ゴールデンサークル”で二人がこの曲をやってくれていて、ムードが分かっていたので、絶対にこの一発録りでレコーディングしたかった。
そのゴールデンサークルでの『月夜のハイウェイドライブ』を最初にリハーサルで聴いた時、“21世紀の古井戸”を感じ、ゾクっとした!チャボさんのルーツである、ボーカリストの横でアコースティックギターを弾くスタイル、そしてその横で歌う桜井和寿。時代を繋げるセッションだと思った。
だから、チャボさんに「エレキでも試す?」と言われた時、即座に「いえ、是非アコースティックギターでお願いします」と答えた(笑)。まさに、この60thに相応しいチャボさんの姿にみえたから。
桜井とは7年ぐらい前にも、この曲を一緒にライブでやろうか?と練習した事がある。彼はそれぐらいこの曲が好きだったようだ。Mr.Childrenのポップス性とその裏に持ってる、郷愁感というものはこの曲などが根底あるのかもしれない。そして、その一発レコーディングはまさに素晴らしいテイクになった。その後チャボさんが「別々でもやっておこう」と、桜井が一人でレコーディングした後に、チャボさん一人でギターを弾くテイクも録ったのだが、圧倒的に、一発録りの方が説得力があった。
音楽のマジックとはそういうものなんだろう。
7. ホームタウン/さだまさよし(岡本定義 from COIL+山崎まさよし)
個人的にこの『月夜のハイウェイドライブ』から『ホームタウン』の流れが大好きだ。“月夜のハイウェイドライブ”から戻って“ホームタウン”に帰ってくる感じ。そして『ティーンエイジャー』や『チャンスは今夜』と対極にあるもう一つのチャボさんの世界。重くて、陰影の深い絵画のような世界。それこそが唯一無二の“仲井戸麗市の世界”だと勝手に思ってるのだが、この『月夜のハイウェイドライブ』~『ホームタウン』の流れにはそれがある。
さだまさよし(岡本定義 from COIL+山崎まさよし)のテイクも秀逸。ヘヴィーなリズムとクールなキーボードがその少し陰ったチャボさんのホームタウンのムードを凄く出している。そして二人の歌がこのムードにとてもマッチしていて、山崎君の少し抑制の効いた歌声が説得力と吸引力を恐ろしいほど放っている。
8. 唄/宮沢和史
今回は、全て自分で演奏した人が多い。民生君、和義君、吉井君、そしてこの宮沢君。チャボさんとの交流もさることながら、この二人には共通する何かがある気がしていた所に、この選曲。納得である。
チャボさんのMaxi Single『PRESENT』シリーズは、いい曲がたくさんあり、今回の『OK!!!C’MON CHABO!!!』にもLeyonaさんがカバーしている。
9. 魔法を信じるかい? -Do You Believe In Magic?-/Leyona
今回紅一点の参加。チャボさんのとの交流を考えれば当然の参加である。女性シンガーの中でも、筋が通ったというか、ブレのない音楽活動はとても“ロック”的であり、多くの人に愛されるのは当然だろう。
チャボさんのワードの中に“The Lovin‘ Spoonful”はよく登場する。彼らの同名曲『魔法を信じるかい?』というのは、チャボさん自身が「ロックンロールの魔法を信じていたい」という願いもあってのタイトルではないだろうか?“ティーンエイジャー”もそうだが、あの頃の魔法を信じて生きていけるのは、もしかしたらミュージシャンの特権なのかもしれない。大人になればそれを失くして生きなければならない。だからみんなそんな魔法に掛かりたくて、音楽を聴いてるのではないだろうか。逆をいえば、ミュージシャンはいつまで経っても大人になれないのかもしれないが…。Leyonaさんのサウンドも素晴らしい。特にオルガンの音は60’Sなムードで、グッとくる。そして何よりも歌声の説得力。
10. ガルシアの風/浜崎貴司(FLYING KIDS)
僕のイベント、“ゴールデンサークルVol.00”(2001年)で初めて『ガルシアの風』聴いた時、鳥肌が立った。真夏の蒸し暑い、酸欠状態の渋谷ラママが一気に穏やかな大草原になった。この曲には、それまでのチャボさんとも少し違う新しい“風”が吹いてた。フォークでもない、ソウルでもない、ブルースでもない、この感覚はなんだろう?気づいたら、酸欠状態の中で僕は涙を流してた。誰の中にも“ガルシア”はあって、「どうにもならぬ事など 何もなかった」し、「どうしようもない事など 何ひとつなかった」はず。それをミニマムな世界から、壮大な宇宙まで広がるような世界へ誘ってくれる、チャボさんのここ数年のスタンダード曲だと思う。浜崎君も“ブラックミュージックの人”のイメージが僕にはあったけど、やはりソウルフルを超えた歌を聴かせてくれる。そうだ、ジャンルなんて関係ないのだ。これこそが“ソウルミュージック”なのだ。
11. 別人/吉井和哉
最初に音源が送られて来た時、別の曲かと思うぐらい、この曲は元の『別人』と大きく違う。でも“別人”が歌うのだから、とても洒落の効いたカバーだと思った。何より、“吉井和哉の別人”になっている。チャボさんのソロ1枚目『THE仲井戸麗市BOOK』の登場は、僕らRCファンにとってはある意味、衝撃だった。僕らが想像してた以上に、チャボさんのコアな部分が詰め込まれた作品で、ステージで派手な衣装でパフォーマンスしてるチャボさんはそこにいなかった。
しかし、聴けば聴くほどハマってしまうアルバムで、『仲井戸麗市』を形成してるのは、このアルバムの世界が原点なんだという事を感じながら、またRCを聴くと深みを感じた。その『THE仲井戸麗市BOOK』の1曲目がこの『別人』である。考えてみれば、1980年の『雨上がりの夜空に』から、この『THE仲井戸麗市BOOK』まで、たったの5年である。いかに激動期だったかということだ。
12. さなえちゃん/曽我部恵一
これほど“素”で勝負できる人はいない。曽我部君の、恐らく一発録音の『さなえちゃん』。なんのギミックもない、スタジオなのか部屋なのかも分からないような部屋の鳴り、それが全部演出されたように、この曲を聴かせる。さすがである。70年代のラジオから流れてるような雰囲気、でも決してノスタルジックじゃない。
トライセラトップス同様、古井戸を聴きたくなる人が大勢増えるだろう。
13. 慕情/YO-KING
アルバムラストは『慕情』。ソロ2作目の『絵』の中の名曲。大勢のカバー曲が吹き荒れた後のYO-KINGの『慕情』は何だか、ゆっくりと一日が終わる夕暮れのような切なさがある。