井上音生 公式インタビュー

『東宝シンデレラ』オーディション出身の俳優・井上音生が、10月9日にシングル『あなたに恋をしている』で歌手デビューする。様々なミュージカル作品で存在感を発揮し、ラジオ番組でもリスナーを魅了している美声を存分に届けてくれる作品だ。1980年代の歌謡曲に通ずるサウンドで仕上げられた「あなたに恋をしている」、ラジオ番組を題材とした「ラジオパーソナリティ」、表題曲をショートストーリー化したボーナストラック「あなたに恋をしている~恋のはじまり~」――収録されている3曲について彼女に語ってもらった。


――音生というお名前から察するに、親御さんも音楽がお好きですよね?

井上:はい。父は大学で音楽の先生をしているんです。ミュージカルに連れて行ってくれたりして、音楽に触れる機会は子供の頃からたくさんありました。「ネオ(neo)」はギリシア語で「新しい」なので、私の名前にはそういう意味も込められています。

――どんなミュージカルを観ていたんですか?

井上:劇団四季や愛媛の市民ミュージカルです。市民ミュージカルのオーディションを受けて出演したこともあります。

――小学生の頃は、合唱をやっていたんですよね?

井上:はい。小4から小6までコーラス部でした。小4の時には全国大会のNコン(NHK全国学校音楽コンクール)に出ました。小6の時はコーラス部の部長でした。

――Nコンに出たということは、県内でも有数のコーラス部ですね。

井上:そうだと思います。私が小4の時の5、6年生は歌が上手いみなさんばかりでしたので、私は先輩たちのおかげで全国大会に連れて行っていただいたんですけど(笑)。

――歌うことは、小さい頃からお好きだったんですね。

井上:はい。合唱のコンサートに出演する機会も多い小学校だったんです。『ディズニー・オン・アイス』というアイススケートのイベントで歌ったこともあって、とても楽しかったです。

――音楽は、アニソンがお好きだとお聞きしております。

井上:アニメが好きで、ずっとアニソンを聴いていました。「残酷な天使のテーゼ」は、カラオケの十八番です。『エヴァンゲリオン』をまだ観たことがない小さい頃から歌っていました。

――公式プロフィールの特技の欄には、バレエ、乗馬、空手と書いてありますね。

井上:空手と乗馬は中学校の3年間やっていました。母が「やってみたらどう?」といろいろお勧めしてくれる人で、私も挑戦してみたくなるタイプなんです。クラシックバレエは4歳の頃から習っていて、上京するまで続けていました。

――習っていたことは、どれも今のお仕事に活かせているんじゃないですか?

井上:そうですね。母もそれを見越して勧めてくれたんだと思います。『東宝シンデレラ』のオーディションも両親がチラシを見つけてきてくれたのがきっかけだったんです。私が芸能界に憧れを抱いているのを知っていたので、応援をしてくれました。

――『東宝シンデレラ』は、スターをたくさん輩出しているオーディションですね。

井上:はい。私はどういうオーディションなのか最初はわかっていなくて、1次審査、2次審査と進んで、合宿審査で演技とかのワークショップをする中ですごいオーディションなんだとわかりました。合宿審査の時に上白石萌音 さんがサプライズで来てくださったのが思い出に残っています。

――オーディションで審査員特別賞・集英社賞(りぼん賞)を受賞して芸能界入りしてからは、演技がお仕事の中心ですよね?

井上:はい。ミュージカル、舞台、ドラマ、映画ですね。

――初主演は2021年のミュージカル『魔女の宅急便』。キキを演じたんですね。

井上:はい。キキを演じさせていただいたのは、とても素敵な思い出です。高校2年生の時でしたね。初めてのミュージカル、初の主役というのもあってプレッシャーも感じたんですけど、本当に素敵な作品でした。共演者のみなさんも温かくて、お稽古の時もキキとして私と接してくださったんです。

――ミュージカルで歌う経験はあったわけですが、レコーディングした曲をリリースするのは今回が初めてですか?

井上:はい。歌手デビューというのは想像していなかったですけど、憧れはありました。歌手デビューが決まる前に上白石萌音さんのライブを観させていただいたことがあって、本当に素敵だったんです。幅広い層のお客さんがいらっしゃっていて、萌音さんもとても楽しそうだったのが印象に残っています。

――歌手デビューのきっかけに関しては、漫画家の杉作J太郎さんと一緒にやっている愛媛のラジオ番組『井上音生のNEOラジ』ですよね? 

井上:はい。番組を聴いたレコード会社のディレクターさんが声を評価してくださったというのもあるんですけど、私が俳優をやっているのも理由だったそうです。俳優としての経験も歌手活動に活かしてほしいとおっしゃってくださっています。

――子供の頃から声を褒められることはありました?

井上:褒められることはあまりなかったですけど、「音生の声はすぐにわかる」と言われることはありました。特徴のある声なんだと思います。

――自分の声についてどのように感じていました?

井上:自分の声は好きではありました。でも、私に合った曲はなかなかないのかもしれないというのもカラオケで歌ったりしながら感じていましたね。そういう中で、自分に合っているように感じていたのがアニソンです。あと、私は椎名林檎さんも好きなんです。椎名林檎さんのキーが高い明るめの曲は、カラオケでよく歌っています。「作る曲は女の子の人生のサントラであってほしい」ということを椎名林檎さんがインタビューでおっしゃっていたんですけど、共感できる曲がたくさんあります。

――井上さんのために書き下ろされた曲が世に出ることになるわけですが、どのような心境ですか?

井上:歌わせていただいた曲のCDがお店に並んだり、配信されることを想像するとワクワクしますね。配信サイトとかを見て「私の曲がある!」ってなると思います(笑)。歌手デビューをすることになってから、新鮮な体験をたくさんさせていただいています。作詞家や作曲家の先生と打ち合わせをするのも新鮮でした。

――「あなたに恋をしている」に関しては、どのようなお話がありましたか?

井上:「歌謡ポップス的な曲になります」というお話をお聞きしたのが最初だったんです。ディレクターさんが私の声を聴いて考えてくださった「こういう曲にしたい」というのがあったんだと思います。

――昭和から平成にかけての歌謡曲を聴く機会は今までにありましたか?

井上:はい。中森明菜さんが歌っている80年代の動画とかをTikTokで観ることがあるんですけど、とても素敵なんですよね。当時の音楽に通ずるものがある曲を私が歌うとどのように感じていただけるのかは、自分ではなかなかわからないんですけど。

――とてもまっすぐで素直な歌声が、曲にマッチしていると思います。

井上:ありがとうございます。そう思っていただけると嬉しいです。「あなたに恋をしている」はメロディが覚えやすいですし、イントロも素敵だなと私も思っています。両親も「素敵な曲だね」と言ってくれました。

――演技とはまた別の「歌う」という表現については、いかがでしたか?

井上:自分にできるのか不安もあったんですけど、作詞をしてくださった渡辺なつみ先生とお話をさせていただきながらイメージを掴むことができました。作曲をしてくださった向井浩二先生にもボイストレーニングでご指導を頂きました。

――向井先生は、どのようなことをおっしゃっていましたか?

井上:この曲が出来上がる前から向井先生はボイストレーニングをしてくださっていたんです。もう1年半くらいになるんですけど、最初の頃の私は全然声が出なかったんですよね。「まずは発声練習をしっかりと積み重ねて太い幹を作ってから削って綺麗な1本の木にする」というのが向井先生のご指導でした。

――楽曲制作を始める前の段階から準備をじっくりと積み重ねたんですね。

井上:はい。発声練習で土台を作り上げた後に出来上がったのが「あなたに恋をしている」なので表現をしやすかったですし、自然に取り組むことができたのがありがたかったです。「私の声がキラっと光る音程がある」と向井先生がおっしゃっていて、私にとっても気持ちよく出せる音が存分に入っているんです。歌詞に出てくる相手を想像しながら歌うと、自分でも想像できなかった表現ができたり、意外と声が出たりもするということも教えていただきました。でも、4分間くらいの中で物語を表現して伝えるのは難しいですね。歌手のみなさんのすごさも実感しました。

――透明感にあふれていると同時に元気の良さも垣間見える歌声を楽しめる曲です。

井上:ありがとうございます。《メイクを変えたり 服を選んだり忙しいわ》とか、「もし私が恋をしたらこうなるんだろうな?」と感じるんです。感情がせわしなく揺れ動くところがかわいいなと思いながら歌いました。

――レコーディングは、スムーズでした?

井上:はい。たくさん褒めていただいたんです。自分らしさを出しながら歌うことができました。

――歌詞を書いてくださった渡辺先生は、どのようなことをおっしゃっていましたか?

井上:レコーディングの時に鎌倉の海の写真を見せてくださって、「こういう土地で主人公は暮らしていて、ここのカフェで働いていて」と話してくださったんです。あと、恋バナで盛り上がりましたね(笑)。小説のようにキャッチーで素敵な歌詞なので、歌うのが楽しかったです。

――ボーナストラックの「あなたに恋をしている~恋のはじまり~」は、この曲のショートストーリーですね。

井上:はい。曲のプロットにも「恋した男の子はバイク乗りで、海が似合う青年」と書いてあったんですけど、それがまさに反映されています。私には体験することができなかった青春ですね(笑)。想像しただけで胸がときめくようなショートストーリーなので、ボーナストラックもぜひみなさんに聴いていただきたいです。

――ショートストーリーの収録は、いかがでしたか?

井上:音声ドラマ的な演技は初めてだったんです。試しに練習でやってみたら、「リラックスしたこの感じがいいね」とおしゃっていただけたので、2テイク目、3テイク目では微調整をしながらナチュラルな感じで録っていきました。

――楽曲の「あなたに恋をしている」にもセリフが入っていますね。間奏の「ダイスキだよ」は、ファンのみなさんがキュンとするポイントだと思います。

井上:間奏にセリフを入れたいというお話が最初の段階からあったんです。レコーディングの時にあんまり考え込まずにストレートに「ダイスキだよ」と言ったら、良い感じのものになりました。

――鎌倉で撮影した MVも素敵です。

井上:ありがとうございます。素敵な場所でした。布を使った撮影も楽しかったです。1日をかけて撮影したんですけど、夕方の海がとても綺麗でした。海辺で遊んでいる女子高生や犬の散歩をしている方々を見ながら、「主人公はこういう町で暮らしているんだな」という想像をすることもできました。

――カフェでアルバイトをしているシーンも出てきますよね。

井上:そうなんです。カフェの店員役もしています。その時のお客さん役は、実は渡辺なつみ先生なんですよ。ドリンクをテーブルに運んだ私と、「これは何のドリンクなの?」というお話をしています。鎌倉の穏やかな海や綺麗な空が素敵で、本当に楽しい撮影でした。時間帯によって表情が変わる自然の風景が主人公の気持ちとリンクしているようにも感じて、曲に対する理解も深まりました。

――今回のシングルにはカップリング曲「ラジオパーソナリティ」も収録されますが、これも井上さんにぴったりですね。ラジオ番組にレギュラー出演していらっしゃいますし、昨年上演された生配信舞台演劇ドラマ『あの夜であえたら』でもラジオのパーソナリティー役でしたから。

井上:ラジオとのご縁を私も感じています。歌手デビューもそうですけど、ラジオがきっかけで頂けたお仕事がたくさんありますからね。

――「ラジオパーソナリティ」は、リスナーとの温かなコミュニケーションができるラジオの魅力が伝わってくる曲です。

井上:ありがとうございます。リスナーのみなさんからの応援の言葉に私も本当に支えていただいているんです。みなさんの言葉に直接触れられるのが、ラジオの魅力なんですよね。番組がもし終了することになったらとても寂しいと思います。それくらい生活の一部になっています。作曲をしてくださったたかはしごう先生と打ち合わせをした時も、私のラジオに対する向き合い方をはじめ、色々なお話をさせていただきました。《晴れた空も 星のない空も》というCメロの部分がとても好きです。どんな状況で聴いていても近くにいるように感じられるラジオの魅力が表れていると思います。

――この曲にもセリフが入っていますね。

井上:はい。間奏の部分は、「リスナーさんからのメールが来た」という想定のセリフです。ここのセリフは自分で考えて喋っています。今までラジオ番組をやってきた経験を活かして喋っている感じですね。

――作詞をしてくださった近藤ナツコ先生とは、どのようなお話をしました?

井上:『井上音生のNEOラジ』を事前に聴いてくださっていて、「素敵な番組ですね」とおっしゃってくださいました。打合せの段階で大まかな歌詞があったんですけど、私がラジオをやりながら感じていることをお伝えしたら反映してくださったんです。《カッコつけた言葉を並べて 嘘に聞こえるより 不器用でも 私の言葉で 正直にまっすぐ 語りかけます》は、まさにそうですね。私はラジオで素直に話したいですし、嘘っぽく聞こえたらリスナーさんも楽しくないと思うんです。

――『井上音生のNEOラジ』が放送6年目に突入した理由も、正直にまっすぐに話しているからだと思います。

井上:ありがとうございます。中学生の頃にスタートした番組なんですけど、「変わってない」ってよく言われます(笑)。地元の愛媛の番組なので私は今、電話で出演させていただいていて、毎年のお正月の特番の時にJ太郎先生とお会いするんです。「あなたに恋をしている」を最初に流してくださったのが『NEOラジ』だったのが嬉しかったです。私も最初に『NEOラジ』のリスナーのみなさんに聴いていただきたいと思っていました。

――地元にいらっしゃった頃は、ラジオを聴いていました?

井上:声優さんのラジオを聴いていました。アニメを観た後に声優さんのお話を聴いて作品への理解を深めていましたね。番組をやらせていただくようになってラジオの魅力をより感じるようになったので、これからも続けていきたいです。リスナーのみなさんは、私が昔言ったこともすごく覚えていてくださるんですよ。そういうのも嬉しいんです。

――デビューシングルについて語っていただきましたが、改めてどのようなことを感じていますか?

井上:私の声に合っている曲だとよく言われるんです。曲調も親しみやすいので、幅広いみなさんに聴いていただけたら嬉しいです。

――カラオケの十八番が「残酷な天使のテーゼ」だとおっしゃっていましたが、歌うのが楽しい曲が増えましたね。

井上:はい。カラオケで自分の歌を歌うことはあるんですかね?

――お友だちとカラオケに行った際に、「歌ってよ」って言われることもあると思いますよ。

井上:そうなったら歌います(笑)。

――今後、イベントなどでお客さんの前で歌う機会もあるんじゃないですか?

井上:そうですね。まだ決まっていないですけど、機会があったら、どんどん歌ってみなさんにお届けしたいです。

――歌手活動は、今後も続けていきたいですか?

井上:はい。続けていきたいです。音楽が好きなので、これからも音楽と深く関わっていきたいですし、作詞作曲に対する憧れもあるんです。もし作曲をする機会を頂くことがありましたら、父にコツを教えてもらいます(笑)。その時の自分にしか歌えないような曲もあるでしょうし、いろいろな曲調を歌ってみたいと思っています。俳優のお仕事もそうなんですけど、幅広い一面をみなさんにお見せしていきたいです。

――様々な感情を表現できるのが、演技と歌の相通ずる部分ですよね。

井上:そうですね。自分だったら言わないこと、しないことを表現できるのが、俳優のお仕事でも面白いんです。だからこれからもいろいろな役を演じていきたいですし、様々な曲を歌っていきたいです。

取材:田中 大


先行配信はこちら





井上音生アーティストページ(TOKUMA JAPAN COMMUNICATIONS)